幅80cm   幅80cm

Hisayoshi Muto / Urushi artist

Hisayoshi Muto / Urushi artist

News

  • 2024.4.13
  • コラム

【 Works 】BRILL 漆塗りファサード

NEWoMan新宿

『 BRILL 』 2023年

ファサード
ガラスに透け漆塗り・呂色仕上げ
高さ280cm ×  幅160cm
高さ280cm ×  幅80cm

 

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僕の漆塗りのルーツは「漆器」ではなく「仏壇」です。

仏壇は、長さが150cmを超えるような大きなパーツ(正面の扉や横の板など)から、1cmほどの小さなパーツなど、様々な大きさや形の部品で構成されています。

その全てに漆を塗るので、刷毛の大きさも様々。もちろん漆の塗り方も変わってきます。

ときには、お寺の本堂のような大きいものに漆を塗ることもあります。

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独自の技法で製作しているオリジナルプロダクト『包 -TsuTsuMu- 』は、手のひらにのるような小さなものですが、元々のルーツは仏壇なので当然大きなものに漆を塗ることができるのです。

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その一つが、NEWoMan新宿のアパレルショップ「BRILL」のファサード。

高さ280cm ×  幅160cm

高さ280cm ×  幅80cm

無色透明なガラスに、透け漆を塗り、呂色仕上げしました。

呂色とは、漆を塗った後、さらに漆表面を研いで滑らかにして磨いて艶にする作業です。

手仕事ならではの程よいムラ感を出して欲しいというリクエストでした。

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巨大なガラスはとても重くて1人では動かせないので、筏を組んだ台車を用意して、作業は全てその上で。

僕の工房の塗り場(漆を塗る部屋)は6畳、室(湿気を与えて漆を硬化させる部屋)も6畳。

塗り場と室の間には壁はなく、引き戸で外せる構造にしてあるので、塗り場で漆を塗った後は台車ごと室へ移動させ、戸をはめて加湿するということを繰り返しました。

6畳の広さがあるとはいえ、巨大ガラスを同一の高さで入れることはできないので、台車の高さを変え、室に収めました。

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大きい方の幅が160cmなので、漆を塗る際、両側から手が届く限界。

特に中央部分は、無理な体勢での漆塗りなので、刷毛先に感じる感触で漆の厚みをコントロールしました。

あと、透け漆は、塗っている最中はとても褐色が薄いので、見た目に惑わされると、つい厚く塗ってしまいがちなので、刷毛先の感触はとても重要です。

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とにかく全身運動の漆塗り。

塗り始めたら、一気に塗り上げないといけません。

夏場での作業で、クーラーをつけているとはいえ、汗が吹き出し。

漆面に汗が落ちないように気をつけながら漆塗りの作業でした。

透け漆は硬化直後は褐色が濃く、その後光の影響で数ヶ月かけて色が薄くなっていくのですが、ショップのオープンに合わせるために、時間を区切って日光に当てるということもしました。

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ガラス板の片側に漆が塗ってあります。

ショップでは、正面側がガラス、店内側が漆です。

正面から、透け漆の色や、手仕事ならではの漆のムラ感を。

店内側からは、漆の質感をぜひお楽しみください。

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ショップの顔ともいえるファサードに漆が使われ、携わることができてとても嬉しいです。

ショップにいらっしゃったお客さんには、これが漆かどうか分からないかもしれません。

でも店内に入る時、視界の端に入る漆で、少しでも豊かな気持ちになって、お買い物を楽しでいただけたらと思います。

お近くの方は、ぜひ足をお運びください。