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- 2026.10.2
- コラム
新作 ワイングラス「澪 -Mio-」とブランデーグラス「韻 -In-」
愛知県弥富市の漆作家・武藤久由は、ガラスと漆を融合させた「包 -TsuTsuMu-」シリーズより、ワイングラス「澪 -Mio-」およびブランデーグラス「韻 -In-」を2026年10月1日より発売しています。

シリーズとして初めて、口がすぼまった形状と、ステム(脚)を備えた形状に取り組んだ作品です。
「包 -TsuTsuMu-」は、器の内側になる部分に型を置き、その周りに漆を重ねて形をつくります。漆が形を保てる厚みになったところで、型を抜く。
ところが今回の「澪」「韻」は、この工程では本来成立しないはずの形状になっています。
ワイングラスもブランデーグラスも、器のもっとも広い部分は開口部より下にあります。上へ向かって狭まっていく形です。
内側から形をつくり、型を抜いて仕上げるこの技法にとって、それは本来、成立しない形でした。
シリーズがこれまでぐい呑み、ショットグラス、タンブラーといった、まっすぐ、もしくは口が広がった形状を中心としてきたのは、そのためです。
ワイングラスやブランデーグラスの口がすぼまっているのは、単に見た目のためだけではありません。
立ちのぼる香りを器の中に留め、飲み手のもとへ運ぶための構造です。その機能から生まれる「用の美」ともいえる、グラマラスな佇まいも、この形に取り組んだ理由のひとつです。

ただし、制作の難易度は上がります。それでも、難しさを避けてしまえば、「包 -TsuTsuMu-」のワイングラスやブランデーグラスは生まれません。あえての挑戦でした。
幾度かの試作を経て、コア漆の工程にもう一段の工夫を加えることで、この形状に到達しました。

漆の色は溜色(ためいろ)。
朱漆の上に、琥珀色の透明感をもつ透漆を塗り重ねることで現れる色です。下の朱が透漆を通してほのかに浮かび、奥行きのある優しい表情が生まれます。
強い光のもとでは赤みが浮かび、光が弱まれば、深く落ち着いた色合いに。置かれた場所と、その時々の光によって表情が変わります。
