ガラス破片を漆で包み込んだ器

包 -TsuTsuMu-

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漆は樹液

漆は、ウルシの木の幹に傷がついた時に染み出してくる樹液。

 

その樹液には「湿気と反応して固まる」という性質があります。

​一度固まった漆は、水はもちろん、強酸や強アルカリにも溶けません。

9000年前の縄文遺跡から発掘されるほど強固です。

​その性質を利用して、古来より漆は使われてきました。

塗料として、木やガラスなどの芯材に塗られることが一般的な漆ですが、

『​包』は全く違う独自の方法で制作しています。

 

見えている部分だけがガラス

一見、ガラスコップに漆を塗っているように見えますが​、

全く別の制作方法です。

 

ガラスは見えている部分だけ。

ガラス破片を使い、それ以外の部分は漆と漆素材で形作っています。

『包』は、壊れてしまったガラスコップの足りない部分を、漆で再生した器です。

ガラスと漆

​それぞれの個性

お互い、全く違う素材。

 

キラキラと艶々

透明と不透明

重いと軽い

硬いと柔らかみ

ツルツルとしっとり

 

そのどれもが、それぞれの個性。

それぞれの個性が、お互いを高め合う

“漆”と“ガラス”

それぞれが自立した輝きを持ちながら、足りない部分は補い合う。

それぞれの個性が、お互いを高め合う。

 

だから、漆でガラスを覆い隠さない。

破面だけを漆でつなぐ。 

天然の漆だけの飲み口

漆が1回に塗ることができる厚さは約0.05mm

厚く塗ることはできません。

漆が固まるには、早くても1日かかります。

その漆を20回以上塗り重ねて、

『包 -TsuTsuMu-』の飲み口は作られています。

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​刹那を包み込む

『包 -TsuTsuMu- 』に使っているガラス破片の中には、

亀裂が入っているものもあります。

ガラスを割る際に生じたものです。

後々の破損の可能性がある破片は使用しませんが、

ごく浅い亀裂の破片は敢えて使用することがあります。

その理由を説明します。

塗った直後の漆は、湿気を与えることで緩やかに硬化していきます。

そして硬化した漆は、9,000年前の縄文遺跡から発掘されるほど、長くその形を保ちます。

漆は、緩やかで悠久の時間を内包しているのです。

たた、悠久の時間を内包している反面、

漆制作において、塗った漆は硬化するまでに時間がかかるため、

瞬間的に現れる漆の表情を留めることは難しいです。

逆に、

ガラスの破片は、形あったものが瞬間的に割れたという、

“刹那”を持っています。

ガラス破片と漆を融合させることによって、

刹那から悠久へ続く全ての時間を表現しています。

亀裂の入ったガラス破片を使用するのは、

その刹那を、さらに表現するためです。

この亀裂を

烈(れつ)」と呼んでいます。

烈では、光が反射したり、

漆が染み込んだものもあり、

独特の表情をお楽しみいただけます。

強度面ですが、

ガラス破片の周りを漆で固めていること、

ガラス破片表面にコーティングを施すことで強化し、

亀裂の進行を抑えていますので、ご安心ください。

“まるで唇に触れたかのような”

優しい漆の口当たりを

​どうぞお楽しみください。